更新日:2024年11月20日
iGamingの首都と呼ばれる、マルタ共和国。
地中海に浮かぶ小さな島ですが、世界でも多くのiGaming企業が、本社や支店を置いていることで有名です。
また、マルタのiGaming産業は、国の機関であるMGA (マルタ賭博委員会) により徹底して管理されています。
特に、マルタのオンラインカジノライセンスの取得には、厳しい審査が行われることで知られています。信頼性の高いライセンスなので、多くのオンラインカジノが取得しています。
そんなマルタで、EUのiGaming産業全体に波紋が起きうる出来事が発生しました。
マルタ首相ジョージベラによって、Bill55と呼ばれる、新しい法律が承認されたのです。
この法律は、マルタのライセンスを持つプロバイダーが、海外で何らかの法規制を受けた場合、マルタ議会が、その規制を無効にできる効力を持ちます。
Bill 55が、発動されるには、2つの条件が制定されています。一つは、当該の法規制がマルタのiGaming産業を弱体化させる恐れがある場合。
そして、もう一つは、当該プロバイダーがマルタが制定する賭博法にのっとり、ライセンスを保持している場合です。
つまり、MGAが発行するライセンスを保持し、マルタ政府が国内のiGaming産業に影響を及ぼすと判断すれば、たとえ他国の賭博法に違反し運営停止などのペナルティーを受けたとしても、マルタ国内では引き続き運営を行うことが可能です。
例えば、マルタのライセンスを持つAというプロバイダーが、オランダの賭博法に違反し、ライセンス停止のペナルティーを受けたとしましょう。
マルタ議会が、このプロバイダーAに課されたペナルティーが、マルタのiGaming産業が弱体化すると判断した場合は、Bill 55を発動し、この法判断を無効にすることが可能です。
マルタは、iGaming産業を国内の主要産業として認識しており、マルタのライセンスを持つプロバイダーを、国を挙げて守る体制が構築されたと言えるでしょう。
しかし、今回のBill 55の制定には、EU諸国のiGaming産業の法規制に疑問符を投げかけた形にもなり、EU諸外国では波紋が広がっています。
マルタ政府によるBill 55の承認には、マルタライセンスを持つプロバイダー、888ポーカーが、ドイツとオーストリアの賭博委員会から訴追されたことが背景にあるようです。
888カジノは、ドイツにおいてライセンス未所持の状態で、違法に自国民にサービスを提供していたため訴追されました。
また、オーストリア最高裁は、888ポーカーがオーストリア賭博独占禁止法に抵触している疑いで、マルタ最高裁に抗議する書簡を提出しています。
マルタ議会のBill 55の承認は、ドイツとオーストリアの法判断に、直接けん制する意図があるとみられており、専門家の間では波紋が広まっています。
そもそも、EU加盟国であるマルタが発行するオンラインカジノライセンスは、MGAによって認可されたプロバイダーが、マルタを拠点にヨーロッパ全域で、ビジネスを運営することを許可しています。
しかし、賭博に関する法律は各国で異なるため、EU加盟国全体の足並みがそろわず、摩擦が生まれる要因になっています。
案の定、ヨーロッパ各国の賭博規制機関が、欧州委員会に書簡を提出しました。その内容は、マルタ議会によるBill 55の承認が、Brussels I Recast RegulationやEU法に抵触する恐れがあるというものです。
欧州委員会は、Bill 55が、ライセンス不所持のプロバイダーがオンラインカジノを運営する抜け道になると危惧して、マルタ議会の判決に介入しています。
iGaming産業の中枢都市のマルタですが、そのサービスを提供する、EU諸外国と良好な関係を気づくことが、更なる成長への課題になるのではないでしょうか。
今回は、マルタ議会がBill 55を承認した背景について解説いたしました。
マルタの一大産業である、iGaming関連企業を守るために、制定されたBill 55ですが、他のEU諸国からは、好意的に受け入れられてはないようです。
近年、オンラインカジノやスポーツベッティングは、ヨーロッパの若者を中心に絶大な人気を獲得しています。
iGaming業界が更なる進化を遂げるには、EU諸国が足並みを揃える必要があるでしょう。
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小山道也
カジマル編集長担当、オンカジ業界専門家
オンカジ業界経験10年超。コンサルタントとして就業した後に、欧州でビジネス修士号を取得。そして、海外マーケテシング企業にて、オンラインカジノのメディア立ち上げに携わり、今に至る。 論理思考や分析思考をもとに、入金不要ボーナスをさまざまな観点で解析し、読者に分かりやすく解説するのが得意。独自のレーダーチャートは、その他メディアでも参考にされ業界の標準化にも貢献した。当メディアの運営以外では、オンカジサイト立ち上げ時の外部アドバイザーとしても活動している。
西尾昇
コンテンツ制作担当
ディーラーとしてゲーミング業界に携わる。その後、表舞台からは身を引き、コンテンツ制作に回り、ルーレットやバカラのゲーム解説や攻略記事をはじめ、オンカジ比較評価記事やボーナスの解説コンテンツの制作に従事。業界での人脈が広く、各社のキーパーソンと繋がっているので裏情報にも精通。カジマル.comでは、業界の隅々を分かりやすく解説し定評を得る。エディトリアルメンバーの中ではエキスパートとして立ち回っている。