更新日:2024-05-16
長崎カジノ(IR)とは?
長崎カジノ(IR)とは、長崎県とIR実施会社のKYUSHUリゾーツジャパンが共同で推進する、九州・長崎地域における、総合型リゾート施設の建設計画です。
この長崎IRは、大阪IR計画に次ぐカジノ候補地の一つとして、カジノ開業が有力視されていました。
また、九州地域全体のの観光復興を目指し、計画にはカジノの他、テーマパーク、劇場、映画館など様々な娯楽施設の整備が予定されていました。
しかし、2023年12月27日に、国土交通省はこの長崎IR計画に対し「認定見送り」の決定を下しました。
この大規模プロジェクトは長年にわたり、九州でのカジノ開業や観光復興を巡って多くの議論が行われてきました。そのため、この認定見送りの決定にはさまざまな意見が寄せられています。
当記事では、そんな長崎カジノのIR誘致の経緯から、計画の不認定に至った背景に至るまで、詳細と最新情報を解説します。
長崎IRのカジノ事業計画
2024年現時点で、認定が見送られた長崎IRですが、計画段階では九州地方初のカジノ開業として大きな注目を集めていました。
長崎でのIR誘致計画の主目的は、長崎の魅力を国内外に広め、観光業の振興と地域経済の活性化を図ることでした。
九州は豊かな観光資源を持ち合わせ、長崎IRおよびカジノの開業が周辺地域の集客拡大と、韓国や中国などのアジア地域からのインバウンド消費増加を見込んでいました。これにより、長崎IRは「オール九州」としての、統一された体制が確立される予定でした。
長崎カジノ計画は、韓国のカジノの成功を模範に、ハウステンボス隣接地にカジノを含む多様な施設を備えた複合リゾートを目指していました。
IR施設内には韓国のインスパイアカジノのように、カジノの他にも8軒のホテル、映画館、コンサートホール、ショッピングモール、レストランなど、多様なエンターテイメント施設が予定されていました。
統合型リゾートは、マレーシアのカジノをはじめ、東南アジア諸国を中心に現在開発が進んでおり、カンボジアのカジノやフィリピンのカジノも国家経済に貢献しています。
また、タイのカジノや台湾カジノの開業も近づいているとの情報もあるほか、インドのカジノ、エジプトのカジノやドバイのカジノでも開発計画が進んでいます。
このことからも、長崎カジノの開業はIR施設の主要な収益源となることが期待され、カジノ関連株の人気や計画された施設の規模も壮大で豪華なものでした。
以下に、計画されていた長崎カジノの具体的な面積、ゲーム数、年間収入などの詳細をまとめました。
カジノ面積 | 9,900平米 |
---|---|
カジノのゲーム数 | テーブルゲーム:400台 スロット:3,000台 |
カジノ事業の粗収益 | 15% |
カジノの年間収入 | 約310億円 ※日本人入場料含む |
カジノによる経済効果 | 3,200億円以上 |
その規模は壮大で、もし長崎にカジノを含むIR建設計画が実施されていたならば、その経済効果や地域経済への影響は計り知れないものとなっていたでしょう。
長崎IRとカジノ開業の可能性
長崎IRの建設実現には、カジノ法案と呼ばれる法的厳守が必須で、観光庁設立の審査委員会での厳格な審査、国土交通大臣による計画の承認、そして岸田首相が本部長を務めるIR推進本部による整備計画の認定のプロセスが必要、その道は容易ではありません。
2018年に自民党が閣議決定したカジノ法案制定後、長崎IRとカジノ開業の可能性はどのように見出されてきたのでしょうか?
ここでは、長崎県におけるIR誘致の計画と、2024年現在の認定見送りに至った審査状況について詳しく解説します。
長崎県のIR誘致とカジノ計画の歩み
2027年の開業を目指して始動した長崎県のIR誘致とカジノ計画は、以下の歩みで進展してきました。
年 | 計画発表 | 詳細 |
---|---|---|
2014 | 誘致推進表明 | 長崎県知事がIR誘致推進を表明。 |
2014 | IR推進課設立・基本構想策定 | IR推進課の設立や基本構想の策定が進められる。 |
2021 | 区域整備方針公表 | より具体的な区域整備方針が公表される。 |
2021 | 運営事業者選定 | カジノオーストリア・インターナショナルジャパン株式会社が運営事業者に選定。 |
2022 | 資金調達先名乗り | スイスの投資銀行クレディスイスが資金調達先の一つとして名乗りを上げる。 |
2022 | 認定申請 | 「九州・長崎特定複合観光施設区域整備計画」を国に認定申請。 |
2023 | 認定見送り | 長崎IRの認定が国によって見送られ、継続審査となる。 |
長崎IRカジノ計画は10年近く進展してきましたが、2023年12月の認定見送りにより、今後の進行は不透明な状況にあります。
長崎カジノ認定見送りの審査状況
2023年4月14日、大阪IRが認定された一方で、長崎県のIR誘致計画は認定見送りの結果になってしまいました。
この結果、2027年秋の開業を目指していた長崎IRとカジノ開業のスケジュールは、ほぼ絶望的な状況に陥りました。
長崎IRの区域整備計画申請から2023年11月までに少なくとも7回の審査が行われましたが、県議会からの遅れの原因に関する質問に対して、政府からぼ明確な回答は得られない結果に終わっています。
そして、2023年12月27日、国は長崎県佐世保市への長崎IR誘致計画の認定見送りの審査状況を発表しました。
現在長崎県は、長崎IR計画自体の再申請については明言を避けており、長崎カジノの将来は一旦白紙の状態に戻っています。
長崎カジノのIR開発場所としてのハウステンボス
長崎カジノのIR開発場所として選ばれたのは、長崎県佐世保市に位置する日本最大の単独テーマパーク「ハウステンボス」です。
東京ディズニーリゾートの1.5倍の広さを持つこのパークは、オランダ風のヨーロッパ街並みの再現で知られ、ドラマや映画の撮影地としても人気です。そのため、ハウステンボスは長崎におけるIR計画のための理想的な開発場所として、初期から注目されていました。
しかし、IR開発進行中にハウステンボスは財政難に陥り、最終的には外資系投資会社に買収されました。
このハウステンボスの買収が、長崎カジノのIR開発にどのような影響を与えたのか、以下でさらに詳しく解説します。
長崎IRによるハウステンボスの再生計画
ハウステンボス内での長崎IRの開発計画は、建物が持つ西洋と東洋の文化の融合を活かした、ユニークなコンセプトを採用して進められていました。
また、長崎カジノの開発はハウステンボスの敷地を用いた再生計画の一環であり、パークの低迷期を脱する戦略的な取り組みでした。
1992年の開業以来、ハウステンボスは日本最大の敷地面積を誇るテーマパークとして、長崎だけでなく九州地方の観光業に大きく貢献しました。しかし、時代の変化に伴い業績は徐々に悪化し、2003年には2,289億円の負債を抱えて、会社更生法の適用を申請しています。
経営破綻から7年後の2010年、旅行会社H.I.S.の支援により、長崎ハウステンボスはわずか半年で黒字化に成功しました。その後も、様々なエンタメコンテンツを導入し、好調な営業を続けていましたが、新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、再び大きな危機に直面しました。
ハウステンボスが賭けた再生計画のように、長崎IRの開発も新たな挑戦であり、ハウステンボスの経営難はこの計画に一定の影響を与えたと考えられます。
ハウステンボス買収の背景と長崎IR計画への影響
長崎IR計画の中で、注目されていたハウステンボスは、経営上の困難を背景に、2022年に香港の投資会社PAGによって買収されました。
この買収の主要な背景となったのは、新型コロナウイルスのパンデミックと、それに伴う緊急事態宣言による、ハウステンボスの経営不振でした。
外出自粛の影響で訪問者数が劇的に減少し、エンタメ業界全体が経営難に陥り、ハウステンボスも過去最大の赤字を記録しました。
PAGによるハウステンボス買収の結果、九州電力やJR九州、西日本鉄道などが保有していた国内株式も全て売却されました。この変化は、ハウステンボスだけでなく、九州地域の経済にも大きな影響を与えた可能性があります。
当時、長崎県の知事や市長は、ハウステンボスの買収が長崎IR計画に、直接的な影響を与えないとの見解を示しました。しかし、PAGによる買収が長崎IR計画への資金流出として国に疑念を持たせ、最終的にカジノ事業計画の認定見送りの一因となった可能性も否めません。
このように、長崎IR計画にとってPAGによるハウステンボスの買収の背景は、国が認定を進める上で重要なターニングポイントとなったと言えるでしょう。
長崎カジノはいつできる?IR計画の新着情報
長崎カジノはいつできる?と国民の関心も高かった長崎IR計画ですが、2024年現時点の新着情報は、国からの認定見送りという残念な結果です。
この決定は、長崎県が国土交通省に提出した、区域整備計画に対する1年6ヶ月の審査の末に下されました。
大阪IRが認定された一方で、長崎IRが見送りとなった主な理由は、資金調達に関する不安と運営会社の実績の乏しさでした。
長崎県の知事と市長はこの結果に強い不満を表明し、運営会社は「1年半以上の準備期間を経ても納得できない」と批判しました。しかし、すでにIR整備計画の募集期間は終了しており、再申請の道は困難な状況です。
長崎IR計画では、資金調達の不確実性や投資家の運営経験の不足が問題視され、特に、資金調達における主要なパートナーであったクレディスイスの崩壊が、計画の資金面での審査委員会の不安を増大させました。
また、長崎IR運営における投資家の実績不足や、ギャンブル依存症やカジノでの違法行為への対策に関する問題も指摘されました。長崎のIR計画の政府による認定不可という判断は、日本におけるカジノ事業への透明性厳守の重要性や、厳しい審査基準を強調しています。
このように長崎カジノは認定見送りとなってしまいましたが、今後も政府からのIR計画に関する最新情報に注目が集まっています。
長崎IR開業による雇用創出、カジノ売上の経済効果
長崎IR開業による雇用創出や経済効果は絶大で、IR施設内だけに限らず、九州全域の活性化に繋がると考えられていました。
具体的な長崎IR開業による雇用創出や経済効果の数字を、以下にまとめました。
雇用創出 | 28,000~36,000人 |
---|---|
経済効果 | 3,200~4,200億円 |
年間売上高(5年目) | 約2,715億円 ※内、カジノ売上高約2,095億円 |
注目すべきはカジノ事業だけで年間売上高が約2,095億円と、全体の77%を占めています。
IR区域への年間来訪者数は約673万人と見積もられ、その中で外国人観光客は約151万人に上るとされ、莫大なインバウンド消費が期待されていました。これは、政府が目指すインバウンド消費全体の約1.5%を長崎IRが占めることを意味しています。
これらの数字から、長崎IRの開業とカジノ事業は、地域経済に与える影響のみならず、日本全体の経済にも大きな影響を及ぼす可能性があったことが伺えます。
長崎IR誘致で変わる北九州の風景
長崎IRの誘致により、長崎県、佐賀県、福岡県を含む北九州エリアの風景は大きく変わるとされていました。この変化は、物理的な都市景観だけに留まらず、地域社会にも深い影響を及ぼすものでした。
特に、交通環境の改善は大きな変化の一つであり、長崎空港の利便性向上、海上交通機関の改良、広域交通ネットワークの強化、渋滞対策のための幹線道路整備などが計画されていました。
さらに、長崎IR区域は国際観光の拠点として位置づけられ、商業地域の拡大が予定されていました。IRやカジノ建設の周辺地域では、魅力的な街並みの形成を基本計画とし、国際的な集客を目指す土地利用が計画されていました。
また、IRやカジノの従業員や関係者の住環境整備により、「スーパーシティ長崎」の誕生が期待されていました。これにより、公共インフラの整備が進み、長崎の地域住民がより働きやすく、生活しやすい環境整備が見込めます。
このように、長崎IR誘致は北九州エリアの風景を一新し、地域住民の生活に多大なメリットをもたらす可能性を秘めていたのです。
まとめ
当記事では、長崎カジノのIR誘致とその認定見送りに関する最新情報を、さまざまな視点から詳細にまとめました。
構想から長い期間を経た長崎のIR計画は、北九州を中心に九州全体の地方発展に大きく貢献し、雇用創出や経済効果に絶大な影響をもたらす一大プロジェクトです。
しかし2023年12月27日にIR誘致の認定見送りが決定し、2024年1月現在、残念ながら長崎のIR計画は断念せざるを得ない状況です。したがって、長崎にて、ポーカーの大会等がIR系のイベントが開催される可能性は、当分ないでしょう。
ただし、再申請の道が完全に閉ざされたわけではありません。あくまでもIRの募集期間が終了しただけで、政府の今後の動向次第では、再び申請が認められる可能性が残されています。
現時点で日本で決定しているIR候補地は大阪のみですが、将来的な日本全体の活性化やインバウンド観光のさらなる増加には、複数のIRが不可欠です。
このように長崎IR計画には多くの課題が残りますが、これが九州地域の未来への大きな一歩となることを期待しましょう。長崎IRとカジノ開業計画の今後の動向からも目が離せません。